おたふくかぜ

おたふくかぜについて ~ワクチン接種を忘れずに~

 

おたふくかぜ=流行性耳下腺炎=ムンプス

日本ではいまだにワクチンは、補助があっても、1回のみです。

おたふくかぜは、Mumpus virusが主に耳下腺、顎下腺(唾液を作るところです)に感染し、急速な耳下腺腫脹、発熱で感染し、48時間以上持続する耳下腺腫脹が特徴です。年齢が高くなるほど症状は強くでます。症状が現れる顕性感染は全年齢で70%ですが、4歳超えると90%に症状が現れます。一番多い合併症となるのは髄膜炎で、何と罹患者の半分には髄液の細胞数増多を認めます。頭痛、嘔吐、項部硬直などの髄膜炎症状を認めるものは3~10%とされています。ウイルスですので、抗生物質は効果ありません。発熱、疼痛をとる解熱鎮痛剤の投与のみです。冷えピタを貼る方が時々いらっしゃいますが、あれは刺激物でひんやりするだけで、血流が増えるため、もっと腫れてしまいます。

 

臨床的には、一番問題となる合併症は一側性の高度難聴で、0.27%に合併します。その後、2018年の報告で、日本では少なくとも2年間に359人ものムンプス難聴が発生していたそうです。ステロイド治療をしてもほぼ回復しません。片側が完全に失聴しますが、学校検診などで気づかれる事もあります。耳鼻科医の頃は、医師がお母さんに「おそらくおたふくかぜの後遺症でしょう。聴力が回復することはありません。」と告げると、お母さんが外来で泣き崩れるという事を何度か経験しました。ちなみに私の妹も、この後遺症があり、真横で話される事は聞こえないようです。

他の合併症は、髄膜炎がよく見られます。また、思春期近い男児は精巣炎をおこし、不妊の原因になると言われていましたが、多くは一側性(25%)であり、両側性の精巣炎は10%におきます。(妊孕性に問題はありません。思春期以降の女性では卵巣炎(5%)乳腺炎(15~30%)を起こすと言われます。

おたふくかぜは、非常に経過が様々です。左右の耳下腺、顎下腺が順々に腫れて、2週間ぐらい症状が続く方もあれば、耳下腺の腫脹がはっきりせず、ウイルス性髄膜炎で入院して、後から血清学的におたふくであったとわかることもあります。以前、学校保健法では、耳下腺の腫脹が消失するまで登校不可でしたから、10日くらいお母さんが仕事に行けないこともありました。2012年に改訂された学校保健法では「学校保健安全法施行規則第19条は「耳下腺,顎下腺又は舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し,かつ,全身状態が良好」であれば登校可能となりました。

 

欧米ではMR(Measles Mumps Rubella)ワクチンが主流であり、わが国も1988年に導入されましたが、髄膜炎の合併が報告され、日本では1993年以降、定期接種は中止されています。その後のデータにより、0.04%に髄膜炎を起こすリスクがあることが分かりました。

ワクチン1回接種では10~20パーセントの方はかかる可能性があり、2回接種が推奨されています。2回目は自費になってしまいますが、MRワクチンと一緒に就学前に2回目の接種がおすすめです。日本もはやくMMRワクチンが導入されると良いですね。