RSウイルス性細気管支炎

目黒区でRSウイルスが大流行しています。例年、冬の初めに流行が多いウイルスですが、実は検査ができてみると、一年中ウイルスはいることがわかっていました。昨年度はコロナで感染対策が徹底されたことや、集団生活が少なかったことから、RSウイルスはもちろん、インフルエンザも全く流行しない異例の年でした。

乳児は症状が悪化します。月齢が低いほど注意が必要です。年齢が上がると、ちょっと鼻水や咳が多いくらいで、発熱もなく普通の風邪として経過します。ですから、検査の保険適応は1歳未満で、登園停止基準もありません。

RSウイルスの臨床的な特徴は、水様性鼻汁が多量だな、と思っていたら、2,3日後に激しい痰がらみの咳、発熱(38度台後半くらい)、喘鳴(外からもぜいぜい聞こえる)陥没呼吸(胸がぺこぺこ)せき込み嘔吐(激しくせき込んで分泌物とともに食べたものやミルクを嘔吐します)分泌物(鼻水、痰)が非常に多く、気管支のさらに狭いところに炎症を起こし、月齢が低いと痰が詰まって無気肺や肺炎を起こしやすい、最も入院加療を要しやすいウイルスといえるでしょう。

喘息の体質のある児は、喘息発作を起こしやすいウイルスです。

毎年かかるウイルスで大人もかかります。ですから、お母さんもかかるし、新生児からかかってしまいます。乳児、年齢の低い児ほど、無気肺など起こしやすく、呼吸状態のこまめな観察が必要です。

入院しても、対症療法しかありません。特効薬はありません。点滴で水分、電解質、糖分を補い、加湿と酸素と気管支拡張剤の持続吸入を行います。

入院の目安は、①呼吸状態が悪い せき込んで寝付けない(寝ていて起きるのは仕方ないです)陥没呼吸がひどい(胸がペコペコへこみます)呼吸数が多い、酸素飽和度が95%以下になる②全身状態 せき込んで嘔吐し、水分もとれず、おしっこでない ③発熱が4日以上続き、細菌の二次感染が疑われる などです。月齢が低いほど、狭い気管支が痰で詰まって無気肺や肺炎を起こしやすいので、入院になる確率が高いです。通常1歳までに半数2歳までに100%罹患します。初感染では上気道炎を引き起こしますが25~40%が下気道に炎症が波及し、2~3%の乳幼児が重症化し、入院加療を要します。

早産児や、先天性心疾患などのお子さんは、毎年抗体そのもの(シナジス)を筋肉注射しますので、よくご存じでしょう。抗体を体に作らせるワクチンはまだありません。

咳が激しく、飛沫が多く飛びますので、感染対策は非常に難しいです。アルコール消毒は有効です。

入院にならないよう、回数多く1回量少なくミルク、水分(イオン飲料)を与える。離乳食はきつくて食べられません。呼吸状態をよく観察する、喘息性気管支炎に準じた内服治療、吸入、をして、長い経過ですが乗り切りましょう。

RSウイルス Respiratory Syncytial Virus                     パラミクソウイルス属 エンベロープ有する 1本鎖RNAウイルス 潜伏期3~5日 平均4日 発症から1週間、10日間くらいは感染性ウイルスを排泄 接触 飛沫感染